1
ウェルカム トゥ ザ リアル ワールド 2008/1/15
・・
本作は、1972年のミュンヘン・オリンピックを悲劇的なものとした、
ミュンヘン・テロ事件を回顧するものです。
犠牲者の遺族、ドイツ政府関係者、辛くも難を逃れた選手、
そして唯一生き延びて隠遁生活を送る犯人などのインタビューと、
当時のニュース映像、犠牲者のホームビデオなどから構成されます。
本作が恐ろしいのは、
もちろん、犠牲者の変わり果てた姿を見せつけられるのが大きいのですが、
それよりも、「狂気」が様々な形で断片的に切り取られているからだろうと思います。
立てこもりの最中も続行される競技、
立てこもりの建物の脇で練習や休養をして過ごす選手、
「最多動員数」と言わしめた、野次馬や群がるマスコミのカメラ、
知らず知らずのうちにテロを「消費」する1972年の人々、
そして2008年の私…。
大勢の無為無策の人々に囲まれながら命を落とした犠牲者の絶望はいかばかりか…。
2
硬派なドキュメント映画 2007/8/26
・・
1972年、旧西ドイツで開催された「ミュンヘンオリンピック」で実際に起きた、アラブ過激分子によるイスラエル選手団襲撃事件は40代以上の方にとってはけっこう鮮烈な記憶として残っていると思います。この作品は、当時の選手の遺族、イスラエル側の要人、旧西ドイツの警察組織関係、唯一生き残ったアラブゲリラなど、関係者たちの証言とニュース映像をもとに、事件の全貌を明らかにしようと試みた作品です。1999年のアメリカ作品。監督はケヴィン・マクドナルド。「氷の微笑」のマイケル・ダグラスがナレーションを担当しています。
作品が制作された年代から、当時のハリウッドお得意の「反アラブ的な扇動映画」と思いきや、さまざまな立場・イデオロギーの証言者からバランス良くコメントを盛り込むことによって、淡々と、しかも鋭く事件の真相に迫る硬派なドキュメンタリーに仕上がっています。
敗戦国である西ドイツが置かれていた当時の国際的な立場、アラブとイスラエルの対立構造、そして主催者IOCの思惑などが複雑に交差しながらも、意外なまでに脆弱だった当時の警備態勢など、リアルタイムではわからなかった事実が明らかにされ映像として生々しく再現されています。組織の中の個人、暴力装置としての国家、そしていまも収束することのない民族紛争の中の個人と、個人と集団との関わりについてさまざまなことを考えさせる契機になります。