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難解な作品ではなくて、単に感覚に訴える映画なんだと思うが 2007/12/9
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この映画のあらすじを聞かれても、答えようもない。難解というよりも徹底して観客の感覚に訴えるということであろう。
洗面所の配水管を伝う男女の営みの声の反響、ゆっくり剥れる壁紙の不安定感、誰もがいらつく蚊の音、仕事をせかすように耳に響くプロデュサーの秘書のタイプライターの音といった五感を過剰に刺激する演出は、見ている間は夢中で引き込まれてしまう魅力は持っている。そして箱の中身や女の死体の処理、フィンクの両親の安否など、解決しない事柄も多く、この事がフィンクのみならず観客をも不安に掻き立て、この中盤までの緊張感のある、そしてシュールな演出は見事だった。しかし、後半にジョン・グッドマンがありえないほどの炎の中に登場すると、現実感がゼロになってしまい、個人的にはここから何かしらけてしまって、拍子抜けしてしまった。このシーンのせいで、最後の海辺のファンタジックでロマンティックな終わり方も生きてこなくなり、傑作までもう一歩であった。
ジョン・タトゥーロはモジャモジャ頭で名演。この人は派手さがないが、役柄ごとに演技や容姿を変化させて、同じカメレオン俳優のロバート・デ・ニーロを上回る実力を持っていると思う。スティーブ・ブシェミはチョイ役ながらいつものように場面をさらってしまう怪演。
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理屈抜きで楽しむフィンクの体験 2007/8/23
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才能を買われてハリウッドによばれたはずであったのに、依頼された仕事は、彼の理想とは余りにかけ離れたものだった。彼は褒めちぎられては居ても、ハリウッドにいる多くの脚本家の中の「ただの新参者」だった。不気味なホテル、不気味なベルボーイ、不気味な廊下、不気味な部屋、そこにぽつんと一人ぼっちの主人公。彼は、異常に無垢な笑顔を持つ隣室の大男チャーリーに心を許す。主人公の心細さが伝わる。
彼の室内で、登場人物達から「暑い」という台詞が連続して出てくる終盤。主人公の心の爆発がホテル炎上の形で具現される。そして海辺で、あの部屋に飾ってあった写真通りの景色を見るフィンク。このラストシーンによって、観る者はそれまでの重圧と緊張感から開放された。それまでの雰囲気と全く異なる、実に爽やかで印象深い映像だった。
主人公の人物像、彼の心中や、これからの彼など、全てを観る者の想像に託すこの作品。
想像の世界に大いに遊ばせてもらった。
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想像力を刺激する不条理ドラマ 2007/10/28
繊細な脚本家である主人公のバートン・フィンクが様々な事件に巻き込まれるというドラマ。創作者の心象風景を描いた、この作品は誰もが楽しめる、一般受けするような作品ではない種類の傑作だ。
大抵の映画は、映像の直截的な表現力を武器に、CGを駆使したりして、ときに見るものの想像力を奪う。ところが、この映画は見るものの想像力を奪うという手法ではない。作品のなかで何度も出てくる水辺の女性の絵、映画のクライマックスに起こる事件の結末、そしてラストシーン。どれも、結論がない。すべては見るものの想像に任せている。
見慣れた、いわゆる一般的な「映画・ではない、小説のような不条理ドラマだ。ストーリー構成や映像編集も見事で刺激的。