1
配役がいまひとつだけどこの値段なら買っても損はない 2007/8/30
・・
公開当時は、黒澤監督の久々の時代劇で、勝新の降板劇やコッポラ、ルーカスの製作協力、カンヌ映画祭のグランプリ受賞と話題豊富で劇場でもかなりヒットしました。
しかし、公開当初から映像の色彩美とは裏腹に人間描写がいまひとつで往年の黒澤時代劇を期待した人々からは散々の酷評されていました。それでも現在、ヒットしているようなアイドル映画に較べれば数百倍丁寧に作られているし、武田信玄に影武者がいたという着想や脚本も秀逸だが、キャスティングがいまひとつです。仲代達矢は突然の代役だったことを配慮すれば善戦していますがオーバーアクト気味、ショーケンはセリフが聞き取れず演技以前の問題です。オーディション組では隆大介にはスケールを感じましたが、油井昌由樹は素人臭くて続く「乱」でも完全にミスキャストです。顔が小さく童顔で痩せ型の体型の若手俳優の多くは演技以前に髷や着物に非常に違和感があります。クリント・イーストウッドが「許されざる者」を監督した当時、馬に乗れる役者がいなくなってしまったので西部劇を作るのは難しいと嘆いていたそうですが、日本でも髷の似合う俳優がいなくなってきており、本格的な時代劇映画を撮ることは難しいのではないでしょうか。
そんな中にあって山崎努だけがプロッフェショナルな演技をみせてくれます。また当初の予定では勝新を主役に、山崎努の演じた信廉を若山富三郎、上杉謙信を三船敏郎という案だったそうで、ぜひこの配役で観たかったです。
私個人の評価は★3個ですが、低価格してくれた東宝の英断と、まだ未見の方もこの値段であれば購入してみても良いのではないかと思って★4個にしました。
2
こけおどしの駄作です 2007/10/5
齢を重ねて黒澤明はどうしちゃったのでしょう!年々、作品の質が下がってきたように思えてなりません。
この作品もそんな後期の作品ですが、場面の作りのチープさが気になって仕方がありません。特に戦闘の場面=1.徳川家康との夜戦 2.クライマックスの長篠の戦いなどは、いかにも低予算で作りましたとの印象が強いです。CGが現在ほど進歩していなかったにしても、黒澤作品らしからぬ体たらくです。
「ロード・オブ・ザ・リング」ほどの戦闘場面は望めないにしても、黒澤作品「隠し砦の三悪人」の冒頭の城の場面くらいの迫力が欲しいところです。それに、長篠の合戦後の馬が倒れている場面が長過ぎて退屈します。戦闘の虚しさのようなものを描きたかったのかも知れませんが、意味なく長いシーンです。
役者の中では、萩原健一が全く駄目ですねえ。そもそも台詞が聞き取りにくいし、主人公の影武者に対する反撥の心理が全く描ききれていません。
低予算で撮るなら、いっそモノクロにして無名の役者を揃えて、その分重厚なつくりにすれば良かったのに・・・。なんて、思ってしまいます。
と言う訳で、黒澤作品がお好きな方でも”がっかり”間違いなしです。
3
レンタルで十分。東宝さん、もっと安くなんないかな 2007/11/23
安かったから購入した。
恥ずかしながら未見だった。
友人でカラー作品のクロサワはNGの人がいるが
これを見て、そりゃそうだと実感した。
「夢」を見た時もそうだったが
白黒の時と、あまりにもテンポが違いすぎて
眠い。ひたすら眠い。
だんだん、なんのために、この映画を見ているのか
オレは一体、今、何をやっているのか
単なる時間を無駄にすごしているんではないか
と思わせる箇所が何度もあった。
ラストシーンの旗と一緒に男が川流れしているシーンは
「世界のクロサワ」という旗印と監督自身の川流れに見えて
そこだけが、ちょっとブラックで面白かった。
長篠の戦いでは、あえて、騎馬軍団が撃たれる映像を見せないというのが
そのあとの死屍累々の地獄絵図のインパクトを強くしている演出は
決して低予算ではない、と思いたい。
このあとに「椿三十郎」を見たら
抜群に面白かった。
4
若い頃は何もわからなかった 2007/12/16
・・
私が劇場で見た数少ない映画のひとつである。大学に入って最初に読んだ小説が山岡荘八の「徳川家康」。戦国の武将を描いた小説を読み漁り、英雄豪傑の生き方に酔いながら学んでいた、何とも幼稚な時代であった。そんな頃に公開された映画である。私は数多く流されたテレビCMのセリフを暗記し、サントラのレコードを買い、勇んで劇場に向かったのであった。しかし何だかはっきりしないままに終わってしまい、「歴史を知らないとよくわからない映画」だと思いこんで、実際何人かにはそう話した記憶がある。
今回20数年ぶりに見直して、二十歳前後の私の理解力がどれほど足りなかったかを痛感した。当時から賛否両論あった作品であるが、映像はどのシーンも「絵になって」おり、登場人物一人一人の心の物語として、実に含蓄の深い作品に仕上がっている。武田信玄の肖像画には最初に予定された勝新太郎の方が似ているけれども、ここは仲代達也の方が役柄に合っていると思う。また、カラヤン指揮によるペールギュントの音楽よりも実際に使われた池辺晋一郎の新作の方が、音楽的にもはるかに人間の悲しき宿命に忠実である。
なお、群雄のセリフはまったく記憶どおりであった。昔のことはよく覚えているものだ。
5
大味なのはルーカス&スピルバーグのせい・ 2008/1/20
映画を人海戦術で取るのが「大作」だった時代のカンヌ受賞作。確かにスケールは大きいんだけど、同じ負け戦を描いても「乱」ほどの残酷さ、文学性が無い。かといって、モノクロ黒澤時代劇の大衆性・娯楽性があるかというと、それも無い。
僕は時代劇ファンなので、武田・上杉・織田・徳川といった諸将も出てきてそれなりに楽しめたが、そうでない人には中途半端な作品に映ると思う。色んな意味で次作「乱」は黒澤明にとってリベンジ企画だったのではないか。
この大味な印象の理由としては、内面描写が今一つであることが挙げられる。例えば、仲代達矢はやはり素晴らしく上手い俳優で身体の動きがキレまくってるものの、シナリオのせいか編集のせいか、なぜ影武者がそこまで武田信玄を愛したのかよく分からない。他の黒澤作品は脚本や映像の妙が冴え渡ってる作品も多いが、そういえば意外に微妙な心情描写のカットとかなくて、登場人物がべったりキャラクターとストーリーに塗られて、人間性の上に台詞が上から当てがわれてるような作品が多いような気がする。(考えがあってそうしてるのかもしれないけど。)
本作はその作風が大味な方に作用しちゃったのかな。
6
まだ醍醐味の残る最後の黒澤作品 2007/11/10
もうこの頃になると今までの黒澤作品のような重厚長大な時代劇が作れなくってジョージ・ルーカス、スピルバーグの資金援助で作り上げたカンヌ映画祭グランプリの時代劇叙事詩です。これを見てしまうと大河ドラマの時代劇はもう観れなくなりますね。徳川家康、織田信長の武田信玄に対する描き方も良いです。戦国時代に生きる武将の潔さと戦いの非情さ。川中島の戦いもちょっとチープな感じもします。長篠の戦のシーンではちょっと感傷的になりすぎた感もあります。黒澤作品が徐々に作品がスローペース化し始めているのも確かです。