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作品の真髄を抉り出した最高のSpartacus, 2007/12/16
'77年に制作されたバレエ映画の。Grigorovich版のである。舞台上演では約135分掛かるところを、必要不可欠な場面で構成されている為、ランニング・タイムは約92分。でもそのお陰で、舞台上演で感じた冗長感は殆ど無く、一気に観る者をの世界に引き込み、集中させる。クライマックスのSpartacusの死の場面は、ギリシャ悲劇を思わせる物で、非常に印象的、感動の余韻が長く残る。スタジオで撮影されている為、カメラワークも様々な角度から行われ、舞台上演では実現不可能なスローモーションや、映像の合成、人物のクローズアップが可能となり、それが、作品に好ましい効果を齎している。所々、場面の繋ぎにトラブルがあるが、然程、傷にはなっていない。
このの最高水準の出来栄えは、何と言っても、タイトルロールのVasilievとローマ軍の将軍CrassusのM.Liepaの好演が齎した。Vasiliev・Liepaの天を駆け渡るような跳躍と驚異的な回転技を観るだけでも胸がすく思いだ。でも彼等は、舞踊技術の開陳の次元に留まっていない。この2人は'68年の初演のキャストだが、役の解釈・共感度は更に深みを増し、踊りの中に含まれる難度の高い技巧にも、明確な意味があり、その踊り自体が人物の感情・心理となっている事を、観る物に納得させる。勿論踊りではない部分の動きでも、人物の心理を雄弁に表現する。特に、Liepaの鋭く強い眼の表情が印象的だ。観ている内に、VasilievとLiepaの姿が消え、そこに居るのは、正しくSpartacusとCrassusだと何度思った事だろう。この2人が居ればこそ、この作品が成立したとすら言っても良い程の好演だった。
PhrygiaのN.Bessmertnova、AeginaのN.Timofeyevaも大健闘。Bessmertnovaの清冽と言う言葉がそのまま当て嵌まる叙情美に満ちた踊り、Timofeyevaの女性の色香を具現化したような妖艶な踊り。2人の踊りは正しく好対照を見せるが、両者とも自分の夫への愛に溢れている。また男性並みのアクロバティックな技巧も難なくこなす。彼女等も、初演キャストである。
男性陣の群舞も舞台以上に迫力満点。舞台では滑稽に思えた振付も、映画の画面を通して観ると、夫々の軍団の性格を象徴しているように思えてくる。女性陣の整った踊りも良い。Bolshoiの舞踊家達の底力と層の厚さを実感出来た。
Grigorovich版は初演時に、キャストに恵まれ過ぎたのである。今後、これ以上のの映像は出て来ないだろう。
チャプター数は17とやや少な目だが、場面選択に困る事はない。音はモノラルである。