人が人を愛することのどうしようもなさのクチコミ

- 大人の映画
- 2007/10/19
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私たちは映画を観たとき、物象を自らの意思で目撃したと思いがちです。
けれど、ほとんどの場合“見せられた”に過ぎません。巧みな編集やCGを駆使出来る
時代に女優喜多嶋舞と監督石井隆がわたしたちに“見せた”ものは何だったのか、
そこを充分に考えないと『人が人を愛することのどうしようもなさ』を“見た”
ことにはならないと感じています。
かれこれ二十年程前、カメオ工房に立ち寄った際に刻まれた強烈な記憶が蘇えります。
それは年老いた職人の著しく変形した指です。何十年と鉄製のノミ“ブリーノ”を振るい
続けた結果、男の人差し指は通常の二倍に膨れ、硬い皮に包まれていました。許しを請い
触らせてもらったその指は皮膚の弾力、温かさを失い、別種の生物が貼り付いたようでした。
凄いね、思わず声を上げると老職人は目を細めて笑顔をこちらに向けました。
ひとの肉体は変わっていくものです。労働にいそしむ男の腕には血管が浮き出て変形します。
子供を産んだ女性は相応のふくよかな体型になります。労働と長い人生を経て、人は変化
するのが自然であり美しいとわたしは思います。
喜多嶋舞さんの身体は美しかったですよ。その美しさを、その人生の重さと匂いを女優と
監督は表現したかったに違いありません。
描かれたのはカミーユ・クローデルの彫刻に例えれば、「分別盛りL'Age mur」を引き裂き
無残に孤立させた「嘆願する女 L’Implorante」の像です。性愛の女神として複数の男たち
に次々言い寄られる名美でなく、愛が消えることのどうしようもなさに身悶えして、淋しさに
狂った名美、ひとりきりのおんなの姿が描かれています。胸に迫るものがありましたが、
これに気付き共振するには相応の年齢を経なければ難しいでしょう。
大人の映画ですよ、これ。

- 凄い
- 2007/11/19
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一言で言うなら圧巻、凄いに尽きる。
映画という独特のフィルムでなければ表現できない絵の迫力、存在感。
石井隆や佐々木原氏の「映画フィルム」であることへの執念を感じる。
そして名美と岡野のそれこそどうしようもない程の美しさ。
無様なまでに異様な形に見える根底にあるのはどうしようもない人間の純粋さ。
それが最後に人間の持つ複雑な感情全てを成し遂げて、ひとつだけポツンと残る。
純粋で不器用な魂だけがポツンと残る。
それがたまらなく愛おしい。
そのどうしようもない愛おしさに泣いた。
愛おしい映画です。

- リアルな女性描写
- 2007/10/19
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初めて石井監督のマンガや映画に触れた時、
等身大の女の姿がそこにあったことを新鮮に思い、感心した覚えがあります。
以来、チャンスがある度に何本か作品を拝見させていただきましたが、
今回の映画もサービスショット満載だったものの、
本質的には女性の為の映画のような気がしました。
あるがままの女性を見つめ、愛する事ができる監督だからこそ描けた作品ではないでしょうか。
喜多嶋さんが見せた女優魂に対し、同じ女であり、母である身として、
素直に拍手を送りたくなりました。
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