1
本作品を観たことのない方たちへ 2006/4/28
10数年前に初めて観て以来、本作品の何とも言えない魅力にとりつかれ、DVD化を待ち望んでいました。本作品は上映当時興行成績こそ振るわなかったらしいがその後、豪華キャスティング、演出力の水準の高さからカルト的な人気に火がつき、一部のファンからは絶大な支持を得ている作品です。(私もその1人です)
主人公の屈折した愛国心、内なる狂気が迸る様、政界・官界・財界の闇の部分などを独自の視点で緻密に描写しており、気づかぬうちに作品の世界に引き込まれていくことでしょう。近頃の技術に頼りすぎで演出力に欠けており、欠伸が止まらない映画に飽きている方にはぜひともお奨めしたい作品です。
2
発売時期を逸した気がする。逆に今だから良いのか・ 2006/4/30
・・
昔見たときの感動がすごく、その余韻を今も引きずっているので、相当な思い入れを持ってみました。
しかし、その感動はなんだったのだろうかと疑問になるのです。
たしかに映画としてそんなにつまらなくはない。面白い部類の映画だと思います。
役者のせりふが、ストーリーの説明的なことというのが鼻につくというようなことも差し引いても、思い出の中の感動が再び生まれてこない。
もしかしたら、時代的な背景の変化かもしれない。自衛隊の中でクーデターの発起など今は考えられない。ましてや、国鉄の安全性も崩れている。
そんな、今、始めてこの映画を観て感動できる若者はいるのだろうか?
さらに、吉永小百合さんの使い方、がいまいちわからない。無理やり犯された人間と添い遂げられるのか?この辺に、この映画の歪曲した点があるように思える。誤解を避けるためにも、こういう価値観がすばらしいという人にはたまらないのだろうし、昔は私もそうだったのかもしれない。しかし、日本女性のあるべき姿はこうだと言わんばかりの感じはする。
徹頭徹尾、山本圭さんの役が正しい。だから、この役者にしてはかっこいい死に方をする。
一級サスペンスといいながら、何か偏っている映画だと思う。昨今の「憂国」の発売といい、何か意図的なものを感じる。
一応、今まで見ることができなかったものを自由に手にすることができるのは(この映画も意外と手に入らなかった)幸せであるし、私自身はこの映画を楽しめることはできました。ただ昔の感動はなかったというだけです。当時はもしかしたら、という可能性を社会が持っていた感じはする。
かなり三島事件を意識した原作、映画であることは事実だと思う。主演の渡瀬さんはその存在感がずば抜けている。自衛隊のヘリコプターなどはプラモデルまるだし。音楽の気合の入り方は半端ではない。賞賛に値する。
3
いいです 2006/5/5
クーデターの首謀者の男がとてもかっこいいし怖いぐらい説得力がある。平和や国家についていろいろ考えさせられると思う。まあ軍事政権になってしまったら少し怖いのでクーデターを肯定するつもりはないのだが、少なくとも命はって日本を守ってくれている自衛隊の皆さんには日ごろから感謝しましょう。と思う今日この頃。
あと、映画後半の、藤崎の奥さんの元彼氏のリベラルっぽい雑誌記者?の男の台詞が結構私は気に入っている。彼いわく、国家のためには命をかけない、愛するもののために命をかけるとかなんとか(元彼女の影に隠れながら)タンカをきっていたような気がするのだが、なぜか一分後には元彼女を盾にしながら後ずさって逃げていた。まあ、そのあたりが勇ましくってとってもキュートだった。初めて見たときは、私は彼が嘘つきの最低男だと思っていたのだが、この前この映画をもう一度見てみたら、彼は嘘は言っていなかった。女のために命をかけるんじゃなくて、女のために生きるんだそうだ。まあ、要するに自分が一番!!!なんですね。私はあんまり人に自慢できる人生は送っていないが、少なくともこんな人間だけにはなるまいと、ふと思った。
あ、そういえば80年代の福岡や博多駅の様子が少し見れます。
4
小林久三の最高傑作の映画化! 2006/10/2
・・
江戸川乱歩賞受賞作家で、松竹のプロデューサーでもあった小林久三の最高傑作の映画化作品、憂国の自衛隊員がクーデターをもくろむが、発覚、寝台列車にて上京中の自衛隊員のグループは・・というもの。主人公は、クーデター首謀者渡瀬恒彦の妻(吉永)のもと恋人でたまたま電車に乗り合わせ、その計画をしった(山本)であり、山本の活躍と政府の対策、渡瀬の三者からのストーリーが展開される。「新幹線大爆破」などと同様70年代の学生運動が引きずられている雰囲気で展開し、主人公山本も元学生運動家の設定である。当時は、このような設定が受けたのかもしれないが、現在の視点から見ると、渡瀬の論理や行動の方が山本の身勝手で自分だけが正義だという主張に比べれば遙かに立派(だし、ルックスも上)。その点、主人公に肩入れしにくいのが難点か。特撮はいまの水準から見るとあらも目立つが、実物大の寝台列車のセットを作成して撮影した列車のシーンは秀逸。ただ、他の論者も指摘しているが吉永の存在がとってつけたようであり、浮いている。いっそ、「男のドラマ」にしてしまっても良かったのでは。
5
何処かオウムに似て居る 2007/2/26
・・
はっきり言って、話が滅茶苦茶である。だが、クーデター物が持つカッコ良さが無くはない。あまり難しく考えずに、一つの娯楽映画として見るには悪くはないかも知れない。一方で、今、この映画を思ひ出すと、オウム真理教の戯画の様にも見える事には苦笑せざるを得ない。
(西岡昌紀・内科医/2・26事件から71年目の日に)
6
もう少しで傑作の誕生だったのに 2007/9/26
・・
現在はカルト的な人気のある作品だが、公開当時は山本薩夫監督にしては珍しく失敗作といわれ、興行的にもヒットしなかったと記憶している。
1978年の雑誌「シナリオ」に掲載されている脚本を読むと映画とは全く異なっている。山崎努の役は脚本段階では計画段階から登場し、渡瀬恒彦の相棒としてもっと重要な役だったし、三国連太郎は吉永小百合とは関係なく、最後はロボトミー手術はされないことになっている。吉永小百合の役は脚本でも映画でも不要だと思うが、脚本の方が純粋に政治サスペンスになっていたように思う。脚本のいい部分を殺して余計なエピソードや説明を入れすぎなんだと思う。作りようによっては新しいタイプの政治サスペンスの傑作が誕生した可能性もあったのに惜しい。
ただし映画の内閣情報室長・利倉を演じた高橋悦史は良かった。高橋悦史は山本監督の映画では、いつも印象的な役を演ずることが多い。吉永小百合の恋愛ざたや渥美清の特別出演(松竹の悪い癖)で緩んでしまった列車内の描写とは対照的に、政治家やフィクサーたちのドロドロぶりは面白かった。