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クラッシュのレビュー

ここ数年で最高の映画  2006/7/6

この群像劇では様々な人達が衝突するが、その多くは自分の正しさを信じながら他人を攻撃する。しかし時間軸が進むにつれ、それぞれのストーリがつながっていき、登場人物達の意外な背景が見えてくる。そして、登場人物の多くは驚きや後悔に打ちのめされる。 他人の意外な面だけでなく、時には自分の意外な一面を知ることもある。しかしいずれの場合も「実は良い人」「悪い人」といった単純な描き方ではなく、「多面性」として描かれている点が秀逸。 「何故これほどの美点を持つ人が、あんな卑劣さを併せ持つのか」等と考えさせられ、そうなるに至った社会の環境、本人の弱さが切なかった。また目の前の人や状況を理解する前に責めてしまい、後で後悔するシーンもつらい。ストーリーが進むにつれ、見る側は多くの後悔を追体験することになるが、人種差別に限らず、日常いかに多くの先入観に基づいて、安易に判断を下しているか自覚させられた。 群像劇だと「かなり話が進むまで意味がわからない」というものもよくあるが、その点は全く問題ない。複数のストーリが平行しているにもかかわらず、この話は脚本が素晴らしいため、ぐっと引き込まれるようなエピソードがタイミング良く散りばめられている。



人間的な映画だと思います  2006/3/19

公開前にテレビで紹介していたのを見て、興味が沸いて映画観に行きました。アカデミー賞候補だったのに、マイナー映画館でしかやっていなかったのでそれ程期待していなかったけど、すごく心に残る作品でした。善悪の心と葛藤しながらそれぞれが生きていく姿に、共感出来るところもあってテーマは人種差別ではなくて「人間」という感じでした。高校生の頃憧れたマットディロンも「名優」らしい演技でカッコよかった。 ちょっと地味な映画だからあまり日本では話題になっていないけど、アカデミー賞とって嬉しかったです。DVD買います。久々に特典ディスクを付けてほしいと思う映画です。



う~ん...一般的には...  2006/12/10

期待してみてしまったので、なんとも評しがたいものがあります。 マット ディロン/ フィリップ ライアンの警官コンビの演技は印象的で良かったです。 嫌な奴=悪い奴ではなく、いい人=正しい行いでもないという、その微妙なスタンスの描き方はうまいなと思いました。 でも、感動がなく、心も動かされないのが自分でも??? 「そうか.」..という程度の思いでした。 その他の..サンドラ ブロックのセレブな奥様の孤独・人種偏見についてのエピソードは 確かに、アメリカに根付くダークサイドであり人々に問うべき問題を描いているとは思うのですが、いまひとつ訴えかけるパワーにかける気がしました。 もしかしたら、見る側にも最初からそれなりの高い意識を要求している作品なのかも しれないですね。 私はそのレベルに達していないのかも知れません・・・。



諸行無常  2007/4/1

この俗世ではある人の善行が別の人の善行を生むという善行のループがあり、 また、逆の悪行のループがある。この二つのループは独立しているのではなく、 ある変化点をもって交わり、複雑に絡み合っている。 この変化点は、時として不条理であり、それに対する人は全くの無力である。 この作品では二つの発砲シーンで見事に「変化点の不条理」を描いている。 悪行のペルシャ商人の発砲は神への感謝となり、善行の若い警官のそれは 救いようのない悲しみをもたらす。 これが俗世であり、この不条理な俗世をどう生きるか。 さすが、アカデミー賞。 この作品を単に人種差別、銃社会といった「アメリカの恥部」を描いた映画としか 見れない人には、それ以上の感想はないであろう。稚拙な感想である。



佳作だが都合のいい群像劇  2006/4/28

出来の悪い部分といい部分があるので映画としては評価しづらいが長編初監督してはまあまあ。話としては都合が良過ぎるし、甘ったるいパートにはがっかり。冒頭のリュダクリスの演技も論外。 感情の表現がリュダクリスとは比較にならないほど素晴らしいテレンス・ハワード。達観しているようで、この人の役が実は一番不幸なのではと思わせるドン・チードル。俳優ではこの二人が秀逸。 差別・人種問題の映画としてはほんの入口。(監督はカナダ出身でメジャー作品ではないが)まあ今のハリウッドではこれが限界でしょう。



人間は面白い...  2006/6/7

・・ 『ロスでは触れ合いは皆無、人々は金属やガラスの後ろに隠れている。みんな触れ合いたいのさ、衝突し合い、何かを実感したいんだ。』 この印象的なオープニングのナレーションが物語を象徴しています。 物語は、冒頭、死体で発見される黒人青年が、いかに死に至ったかを追いながら人種差別によって、偶然かつ必然的なめぐり合わせを体験する人々の姿を俯瞰していきます。ある特定の人たちには悪の顔を見せる人々が、違う人には良い人の顔を見せる。また、今まで正義を貫いてきた人も些細な事で変わってしまう。そんな嘘のない人間像。 偶然のきっかけでぶつかり合って感情を交わし、人生を交差させていく10人以上の登場者。目を背けたくなるような醜さや憎しみを容赦なく描き、皮肉な運命も示されます。そうかと思えば、奇跡のような美しさが迸る瞬間もある。断片的なエピソードを積み重ねながらすべてを収束し、それでいて人間洞察と人生の機微まで描き切る。 エピソードでは、娘の透明マントの話が秀逸でこれには一番泣かされてしまった。その「奇跡」の真相は意外と簡単なものなのだけど、そんな簡単で単純なことで積年の憎しみが消えてしまうということはきっとあるのだと思います。



押しつけがましくないあたたかさ  2006/6/13

強盗、殺人、人種差別……事故や犯罪と隣りあわせの都市・ロサンゼルスの日は緊迫している。白人警官が交通違反をトリしますふりをして黒人をいびる。同じ街角で別の黒人青年は差別に苛だち、白人の車を狙って強盗を繰り返す。ささくれだった心は弱者へとはき口を求め、追いつめられた弱者は暴走する。しかしその警官も家に帰れば老父の介護に心を痛めている。黒人青年も盗んだ車の荷台にたくさんの難民たちが乗せられているのを見つけ、ひとつの決断をする。根っからの悪人はいない。が、悪を憎み正義を信じながら思いもかけない事件を引き起こす若き巡査の存在が、完全な善人もいないことを示唆している。行き場のない憤りがうねりとなって事件や事故を呼んでしまうやりきれなさに対して、善を漂わせるエピソードは家庭のなかで、あるいは人と人とがすれちがうほんの少しすき間でひっそりと描かれる。押しつけがましくないあたたかさがにじみ出てくる。



余韻が響きます  2006/8/19

ここ数年間の作品の中では、かなりいい作品です。 人種的な問題も絡め、数多くの人間が交差していくドラマです。 見終わった後の余韻が心に響きます。 とてもオススメな作品です。



衝突してこその理解  2006/8/1

映画館で観て、DVDも当然購入しました。 観て損は無い傑作です。 「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家として知られるポール・ハギス の初監督作品ですが、縦横無尽に張り巡らした伏線を一つ残らず回収し ていて、脚本家としても相変わらず素晴らしい力量を発揮しています。 ただ、あまりにも伏線を張りすぎて、ちょっと無理があるんじゃないの と思う所があったり、説明過多な部分もありましたが、許せる範囲だと 思います。 複数のエピソードが絡まり合った本作ですが、私の好きなエピソードは 透明なマントの話と、人種差別主義者の警官の話でした。 本作と「ブロークバック・マウンテン」、「トランス・アメリカ」を観 ると2005年がいかに豊作であったかが分かります。



重いテーマだが???。  2006/8/8

・・  見た人がさまざまな感想を持つ作品だと思います。登場人物が多いので、分かりにくかったという方も多いはず。相関図なんかがあると分かりやすいと思います。    この手の作品は『トラフィック』や『21グラム』などがありますが、まずは脚本家に拍手。豪華キャストの俳優陣も凄いです。個人的には、テレンス・ハワードとドン・チードルの演技が印象に残っています。驚いたのは、ブレンダン・フレイザーの出演。『ジャングル・ジョージ』などのコメディの印象が強いので。  人と人の衝突から生まれる愛。夫婦の間であったり、使用人との間に生まれるもの。形はいろいろありますが、美しいものだと思いました。しかし、それとは逆のパターンもあるわけで、どちらかと言えば、こちらのパターンの方が日常では多いはず。なので、映画の中で描かれた衝突から生まれた愛は、特に美しく思えた。人間関係というものは、難しいものだということをあらためて知らされた感じだ。  DVDの仕様は、少し特典が少ない気もする。ミュージッククリップなどをつけるくらいなら俳優達のインタビューを収録する等してもらった方がいいのではないでしょうか。作品自体は素晴らしい作品なので、見終わった後、作品について色々と考えてみるのがいいと思います。  



違い???  2006/9/8

この映画のテーマは自分達と人種や考え方、習慣の違う者に対する恐れ、疑い、憎悪である!まず登場人物の多さと場面の切り替え、伏線の多さから、うまくこのストーリーまとめる事ができるのかなと思って観ていたが、終盤にいくにつれてそれぞれのストーリーがうまく交差しあい、この作品のテーマが浮き彫りとなる。ほとんどの人間は自分なりの基準(普通)をもっていて、その基準に全く当てはまらない者に対して無意識のうちに壁を作ったり見下してしまったりする。一度そうなってしまうと、お互いに分かり合うことは非常に困難になってしまう。そんな弱い人間の内面をアメリカ社会の人種差別に照らし合わせて表現した映画。観おわった後は何とも言えない切なさと、かすかな希望が交差し、僕の心を締め付けた。久しぶりに余韻を満喫した映画です。



「人類愛」を描いた最高傑作  2006/5/1

いやーこれはいい映画ですよ。重たさが先に立ってしまうようなテーマをどうやったらこんなに清々しい作品に出来るかねえ。ポールハギスってのは巧さだけで、「どーせ魂のない小手先映画でも撮ったんだろう」と舐めてかかったら鼻水噴出しちゃうよ。世の映画監督や脚本家はちょっとこれ見て勉強してよ。アメリカ風情がここまでハイレベルになっちゃってるってのが驚きだし、緻密過ぎず粗過ぎずのバランス感覚の持ち主がハンバーガー王国で育ってるってことが悔しくてならないね。ちなみにこの映画、いろんな国の人の意見が聞いてみたくて、外国人の友人10人に聞いたら9人褒めてた。酷評してた1人は中国人留学生。ラーメン以外興味ないってさ。ドン・チードルってヌードルに似てるのに。



私たちの“衝突”の行方  2006/5/28

この「クラッシュ」は途方もないテーマを扱っているので、最後に答えが見えてくる様な作品ではありません。 違う人種、違う宗教、違う文化、違う言語、違う価値観、違う顔、違う性格、違う愛、違う誇り、違う温もり・・ 私たちの“個性”と言うのは、常に“差別”があるからこそ成り立っているのだと思います。でも自分と言う名の“個”を確立させようとしているのに、なぜ“違うモノ”と衝突するのか・そこにあるものは非常に人間らしい理由があって・・ なぜか見終わった後清々しい気持ちになりました。 この作品はいい意味で非常に“人間臭い”作品です。



人生は、運命という衝突の連鎖。  2006/5/25

・・ クリスマスを間近に控えたLAのハイウェイで起こった1件の自動車事故。それが、思いもよらない「衝突」の連鎖反応を生み出し、さまざまな階層と人種の、さまざまな人びとの運命を狂わせていく。 黒人刑事グラハムとその同僚でヒスパニックの恋人リア。銃砲店で不当な差別に憤慨するペルシャ人の雑貨店経営者ファハド。白人に敵意を抱く黒人青年アンソニーとピーター。地方検事のリックとその妻ジーン。差別主義者の白人警官ライアンと同僚のハンセン。裕福な黒人夫婦キャメロンとクリスティン。彼や彼女の間で、愛がすれ違い、哀しみが砕け散る。憎しみが交叉し、孤独が長い影を落とす。そして、さらに激しい「衝突」が果てしなく、くり返されていく。それでも、人は人を愛していくものなのだと思い知らされる。 『ミリオンダラー・ベイビー』の製作・脚本で一躍、注目を集めたポール・ハギスは、多彩な登場人物それぞれの内面に焦点を当て、これが初監督作品とは思えないほど、陰影に富んだ人物像を鮮やかに描き分け、リアリズムに徹した切れ味鋭い演出をみせている。 サンドラ・ブロック、ブレンダン・フレイザー、ドン・チードル、マット・ディロン、ライアン・フィリップス、サンディ・ニュートンなど、いずれもハギスらが書き上げたオリジナル脚本に魅了されたという芸達者な俳優たちの演技は見事。だが、この映画の真の主人公は、人種間の摩擦と緊張が極限にまで高まり、そこに住む人間の人生を翻弄する、LAという街自体ではないだろうか。 これはジャンル分けすることのできないリアルな人生についての群像劇であると同時に、どこかおとぎ話のような希望をたたえた人間ドラマ。2006年アカデミー賞、作品賞、脚本賞、編集賞の受賞は当然と思える傑作だ。



またこの監督か  2006/8/11

前のミリオンダラーベイビーもひどかったけど、なぜこの監督の作品が高く評価されるのかよくわからない。性交渉のときに使う言葉を、そのまま使っていいものだろうか・もっと表現のしかたがあると僕は思う。それに、黒人の差別も過剰に描きすぎだ。何世代前の映画かと思うやり方だ。ストーリーも、ミリオンダラーベイビーと、一緒で盛り上がりに欠ける。不幸な部分を、強調すれば視聴者の共感を得る時代になったのか・それとも、世界が病んでるのか・僕はこの作品は、つまらないと感じた。



そこには、善人も悪人もいない...  2006/7/19

「他民族国家」「サラダボウル」などといいつつ差別の呪縛から逃れられないアメリカ。多くの人々が交錯するLAは、その象徴だ。作品の冒頭で刑事グラハムが言うLAでの生活と暴力に関する哲学は、ぶつかり合いながら、なお、生きていく人の性を描き出した作品そのものを凝縮させている。そこには、善人も悪人もない。それぞれが複雑に絡み合いながら、繋がって行く。 1つの事件現場に結びつくまでに繰り広げられる数多くの物語のどれもが現実に起こりうる話で、見る側にも存在するであろう「差別意識」を揺さぶります。非常にメッセージ性の強い作品ですが、だからといって、差別をなくそうという主観で描かれているわけではありません。むしろ、人として生きる上で犯してしまうつまらない誤解が生む悲劇や過ち、そして、そこに時として存在する救いをそのままに描いた作品といえます。「きれい事のない」という意味で、どこまでもポリティかリー・コレクトな仕上がりです。 多くの物語を1つにまとめあげた脚本はすばらしいものがあります。しかしながら、「あの人」にアジア人の違いが分かるだろうか?「あの人」はあのくらいの英語なら分かるのではないだろうか?と、細かいところが気になりました。また、それぞれの物語の描き方にパターンがあるため、途中から話が見えてきてしまう方もいるかもしれません。



生々しい現実  2006/7/22

もし、面白くないと思うとすれば、その人はまだ、シアワセなことに、 意に反して人を傷つけてしまう経験をしていない人だろう。 弱さを怒りにすりかえて生きなければ、自分の臆病な自尊心を保てず、 現実という重荷を背負ってそれでも行き続けなければならない・生」の 残酷。あと一歩踏み込めば、戻れない、闇の世界に対面しながらも、 とどまろうとする勇気が、すべての人にはあるに違いないと感じさせる 暖かさが、この映画の救いであり、癒しであり、今、本当に現実を生きる我々への励ましなのではないだろうか。



ちょっと怖い映画  2006/8/29

噂を聞いたときは「政治的配慮によるアカデミー賞」なのだろうとタカをくくっていたが、観てみたらとんでもなかった。 最も人道的な若手警官が犯す事件の衝撃がすごいのではない。観終えた後反芻していると、それに隠れてしまっている出来事を恐ろしく感じる。ベテラン警官の日常的差別。捕まれば終身刑になる犯罪者を弟に持ちながら刑事を続けられるという米社会のシステム。5歳の「黒い天使」の親が、警察に通報すらしないという事実。日本人の感性が素直に受け入れられるのは、黒人を利用する検事とその悩める妻くらいか。 現実の米社会ではどこまでが本当に起こりうることなのだろう。もしもこれらすべてが米国の日常ならば、私は絶対に米国に住みたいとは思わない。 ヒューマニズムを主題とする映画として捕らえると★3つだが、アメリカの闇を照らす映画としては★4つの価値はあると思う。



アメリカの本質的な課題を凝縮した力作  2006/9/14

僕たちはきっと、普遍的な善悪の基準を持っていないのだと思います。 だから立場やタイミングが異なれば、同じ言動に対して抱く価値判断も異なってしまう。 うっすらと気づいてはいるんだろうけど、どう是正すればいいのか分からずに手探り状態でいるのが今の社会なのかもしれません。これはアメリカだけにとどまらず、世界全体を見ても同じだと思います。 イラク戦争にしてもそう。宗教戦争的な色合いを強めている一方で、例えばモハメド・アリなんかはいまだにスーパースターです。彼は紛れもなくイスラム教徒であるにもかかわらず。 僕たちの生きている"今"、人間の持っているドロドロした本質を勇気を持って抉り出してくれている映画、それが『クラッシュ』です。 何回見ても考えさせられます。



最高  2006/9/17

こんな作品を待っていた。 現代人として、誰もが共感できるだろう。 すれ違う人生。そして、ふとしたことでぶつかる人生。 切なくなる作品だ。 最高。



プライズがどうこうでなく  2007/3/24

称賛されるに値する作品だと思う。 作品のなかに内包され、呈示されるそれぞれの問題は、僕らの社会でも確実に存在を放っている。カタチに惑わされず、それら問題の中にある本質的な何かを、僕らは確実に自覚するべきではないだろうか。 この作品の中で、眼前に置かれた不可避的な困難に、根源的な問題に、向き合い抵抗しようとする人間の姿をみることができる。何が問題であるかを映し出した上で、その先にある可能性(飽くまでもあらゆる方向に向かい得る可能性)を示唆したその表現方法においてまさに、僕はこの作品が素晴らしいものだと感じた。 僕らは作品から汲み取る自由を与えられている。作品を通して何かを放射する映画があり、何をも発信しない映画もある。ただ僕は極めて個人的に、最初のシーンから最後のシーンまで、この作品が『映画』であることを疑わなかった。本当に素晴らしい映画だった。



言葉にならない衝撃  2007/3/29

言葉にできない衝撃を受けた作品を紹介します。「クラッシュ」です。 「交通事故」から始まるこの映画は、ストーリー上、互いに無関係なように見える多くの登場人物たちが、実は一つの大きなテーマの基にリンクするという構造になっています。重いテーマで複雑ではありますが、エンターテイメント性もあるので比較的見易かったです。 この映画のキーワードの一つは「人種差別」です。映画にでてくる登場人物は、程度の差こそあれ皆、「偏見」というフィルターで世間を見ています。ただし、そこに「善か悪か」という単純な基準はありません。彼らの眉をひそめたくなる行動や発言にも、それにいたる複雑な事情が用意されており、すべてのエピソードに予測不可能な展開が待ち構えています。 もちろん、映画なのでそういう風にリードしている部分はあると思いますが、人の本質をみようとせずに一部の情報だけで「こいつは嫌な奴だ」とか「好感がもてる」と判断していると後々のエピソードで衝撃を受けます。 「あなたも偏見をもってこの映画の人物を見ていませんでしたか?」 と言われている様な気がしてなりませんでした。 気楽に観られる映画ではないかもしれませんが、人間の本質を鋭く描いた傑作映画としてお薦めいたします。アカデミー賞をとったとか云々は抜きにして素晴らしい映画です。



人種のルツボLAは日本の未来図???  2007/7/8

米国北部の友人たちはLAはアメリカではない、といった。ではアメリカとはなんだろう?白人たちは先住民族を追い出し富裕な大地を我が物にし、その後は都合で国家の活力のため多民族のエネルギーをも活用しているのだ。潜在的にうとみあい、いがみあい、けれど彼らは米国の時刻をともに刻んでゆく。 この映画は民族の混在化がもっとも進んだLAで、真実にたぶんそうとう近いかれらの心象風景を、架空のストーリイのタペストリイとして巧みに編んでいる。描かれる風景は近未来の日本の都市部を予言しているようにもみえちゃうんだが。。。 差別主義者の白人警官が、その警官からの被差別歴のあるアフロ系女性の窮地を、自らの生命をかけて、全力で、間一髪で救う、極めて美しいハイライトシーンがあり(DVD表紙写真になっているところ)、そこに、製作者の真の意図がみえるような気がする。 ヒトは孤島ではありえない、ということだ。世界でもっとも混迷をきわめる大都市の人間ドラマ。2006年アカデミー作品賞。傑作です。



ぶつかり合い、砕かれた心がまたつながれる  2006/10/25

今年(2006年)の一番を挙げればボクの場合この作品になります。 この映画は、ひとつの救いなんだと思いました。 ぶつかり合い、砕かれた心がまたつながれる 心が穏やかに震えました。。。



人種差別の坩堝  2007/3/4

・・ 映画冒頭、刑事役のドン・チードルが、相棒の女性刑事に向って語りかける。「ぶつかり合って、何かを実感したいんだ」と。人種同士のぶつかり合いが、この映画のテーマともなっているが、はたして本当に心の底から<ぶつかり合っている>のか、自分的にはかなりの疑問である。 本作品には様々な階級に属した多種多様な民族が出演しているが、みなさんのっけからキレまくっている。はじめは落ち着いて話していても、人種差別的な言葉がポロっと発せられるたびに、肩をすくめて「人種差別主義者のあんたとはもう話しても無駄」みたいな態度を相手がとる。はなっから相手の声に耳を傾けようとはしない。そのうち、ののしり合いに発展し、あげくの果てに拳銃をぶっ放す・・・。 そもそも相手の正体がわからないがために、肌の色が違う人間を恐れ遠去けようとすることから人種差別がはじまっているというのに、相手を理解しようとする努力もせずにただ<ぶつかり合っている>だけでは何も生まれないような気がする。日産のゴーンが、「人間人種が違えば、わかりあえないのは当たり前」のような発言をしていたが、わかりあえないからこそ、腹を割って話合う姿勢が必要だと思いのだが。



計算されています  2006/8/20

LAは人種の坩堝。 前編、日本に住んでいるとあまりお目にかかれない人種差別の嵐のような断片を、 畳み掛けるように迫ってくる内容で、まるで説明されているよう。 後半は、でも人間って悪いところだけでも、良いところだけでもないんだよ。 と、一つ一つの悪しき出来事が、丁寧にまるで観客の殺伐とした気持ちを、 解きほぐすかのように展開していきます。 なにか計算されつくしていて、「はぁそうですか」と思わず呟きそうでした。 ただ、この映画が全てのキャスト、スタッフの良心から作られているということを 強く感じる作品である事はたしかだと感じました。 そして、若い警官役のライアン・フィリップの演技は素晴らしかった。 この映画のキャラクターで、一番よく居そうな人間と思えたのは彼でした。 もっとも、そう思う事もまた危険なことなのかもしれませんが。



是非見ておこう  2006/9/28

この映画のように社会問題を扱った作品において、何より大事なのは見た者にその問題について考えさせるきっかけを与えることでしょう。 その点からすれば自分にとっては満点の映画でした。 劇中では人種差別に関したいろいろな事件、人間模様が展開されますが、「かくあるべし」といったメッセージはありません。 「こうあってほしい」という製作者の願いが反映されているばかりです。 製作者の考えを問題の「解答」として提示する作品もあります。 そういった作品にももちろん名作はあるでしょうが、その「解答」が安易で陳腐でしかないものならば、 作品とともに問題提起したこと自体が忘れ去られてしまいます。 「クラッシュ」は人種差別と言う問題に焦点を当てましたが、そこから何かを導き出そうとした映画ではありません。 見る者に対し、ただ、映し出すだけ。 また、エピソードが多い割には時間が短く、人物描写も豊かとは言えません。 それらも全て、観客に余韻を残し、自分の頭で考えてもらうための意図的なものでしょう。 人種差別は、日本ではあまり実感の湧かない問題です。だからこそ触れる機会をつくり、考えることが大事だと思います。 これから先、日本でも移民政策や外国人労働者についての議論が増えることはあっても減ることはないでしょうから。 劇中で示される「光」が理想で終わってしまうのか、それとも現実のものとなるのかは、 私たち一人一人が問題としっかり向き合うかどうかにかかっています。 是非この作品を見て、多くの人に問題意識を持ってもらいたいと思います。



希薄なロスの人間関係。人はぶつかって何かを実感したい  2006/10/3

この映画をレビューを書く一日前に観賞しました。この映画のジャンルはいわゆるヒューマンドラマに分類されるものですが、アカデミー賞の最優秀作品賞を取ったこともあり、大変優れた秀作といえるでしょう。パッケージを見た限りでは愛のようなものをテーマにしたような印象を受けますが、クラッシュはそんな単純な映画ではありません。何十人もの人々(少し多い気もしますが、役者さんごとに大変個性的なので混乱することはまずありません)が織り成す、不器用で、もどかしい愛に包まれたドラマです。感動を押し付けるような凡作とは一線を画していますので、ヒューマン系の映画がお好きでない方も楽しめるつくりになっていると思います。物悲しいシーンや感動のシーン、怒りを覚える部分、思わず声を上げてしまうところなど見所が満載の映画だと思います。クラッシュはまさに人間そのものを包み隠さず見せてくれるでしょう。私はレンタルして観賞しましたが、実際購入してみる価値はあると思います。はずれということはないと思うので買うか否か迷われている方はぜひとも手元に置くことをお勧めします。



最後がねぇ???  2006/11/22

・・ 主人公は一人ではない、何人もの人物とその悲しい人生が重なり合っていくタペストリーのような群像劇。それぞれの抱える心の闇、社会への不安、家族への鬱憤、人種差別、銃・・・ とにかくヘビィな事柄が折り重なった人間タペストリーには少し息が詰まった。 物議を醸し出すであろうタブーにあえて触れた点は認めるし、脚本も途中まではいいし、俳優達の演技もいい。 しかしこれだけ人の心を揺さぶっておきながら、最後のほうは演出過多で無理やり丸くまとめてしまった。 同じタイプの不条理人生群像劇ならば「マグノリア」や「21g」のほうが監督の手腕は上。



美しい群像劇だが  2006/12/6

・・ いろんな意味で、アカデミー作品賞を獲ろうとして撮られ、獲るべくして獲った映画に違いない。 登場人物は皆不機嫌で、怒りや焦燥、やりきれなさを押し殺しつつ暮らしている。 彼ら/彼女らはいくつかの衝突のなかで、少しずつ心境を変化させ、いくつかの幸せと不幸を生む、という2日間の群像劇。 脚本と演技は高い水準でバランスをとっている。 マット・デイモンの出す嫌な感じはもっと賞賛されていい。 見事な群像劇だが、そのリアリティをいきなり破壊するような天使のエピソードと、悲しい時に悲しい音楽、ほっとする時に癒し系の音楽、といったテレビドラマ的な音楽のわかりやすさが気になる。 「人の気持ちは今までのアメリカ映画のようにシンプルには割り切れない」という善/悪や敵/味方といった単純なハリウッドの人物造形にアンチを唱える、というスタンスが、今ではむしろ戦略的に凡庸だと認識されても仕方がないのでは。



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