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成瀬巳喜男監督作品のよう 2005/12/26
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佳作という言葉がぴったりの映画ですが、田中裕子の女優としての凄さを見せつけられる映画です。
文学的な恋。それはファンタジーにも近い。女は自転車で、男はバスで職場へ通う。毎朝同じ時間、同じ場所でふたりは擦れ違う。なのに、決して視線が合う事はない。35年の間、目を合わす事なく過ごしていたふたり。目を合わさなくても、たぶん互いを確認していたのだ。それぞれ視界が届く一番隅に置いて...。
ふたりの親同士の不倫と事故をきっかけに、なんとなく離れてしまったふたり。多くを語らないことで、人物の感情を雄弁に語り、画面には日本的な情感が溢れている。映画のリアリティはリアル(現実)をなぞることではなく、丹念なディティールの積み重ねであることに改めて気付かされます。
アルツハイマーが進行する元英文学者と小説家の妻、児童虐待というかネグレクト(育児放棄)される少年といった本筋に絡む脇の人物のショートストーリーが上手くアクセントになっているし、主役二人が能動的でないので、ある意味活き活きと描かれています。「いつか読書する日」というタイトルがラストとも関連するのだけど、意味深でした。美奈子の気丈さと裏腹の悲しみとともに...。
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ウェルカム・バック!仁科亜希子。 2006/4/2
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あれは1972年の春だったか。庄司薫の「白鳥の歌なんか聞こえない」にハマり、そのTVドラマでヒロインを演じた新人女優・仁科明子(現・亜希子)がめっぽう眩しかった。彼女がこの映画で難役をしたたかに演じているのを目にし、うれしくなった。
さて、この映画、不器用すぎる大人の恋物語である。牛乳を配達しスーパーでレジを打つ50歳の独身女性・美奈子(田中裕子)は、読書だけを楽しみに平凡な日常を過ごしている。いっぽう、市役所に勤める槐多(岸部一徳)は末期がんの妻・容子(仁科亜希子)を自宅で看病し続けている。美奈子と槐多は高校時代の恋人同士で、ある事件がもとで疎遠になるが、今もお互いを心に留めていた。それに気づいた容子は、美奈子に願いを託すのだが・・・
美奈子と槐多、このふたりが結ばれそうで、結ばれない。ハリウッド映画なら、ものの10分で片づけてしまいそうな話に、2時間かけるところが日本映画だなあと妙に感心。10代のころ好きだった相手を果たして30年以上も想い続けられるのか・・・・たぶん自分の未熟さゆえだろう、頭で理解できても気持ちにおさまらない納得のいかなさを、役者の芝居や映像美、そして音楽がうまい具合に糖衣してくれている。
メインの3人はもちろん、美奈子を優しく見守る渡辺美佐子、その夫で認知症の上田耕一など、みんなうまい。もうひとつの主人公ともいえる坂の多い町を、阪本順治や松岡錠治の作品で馴染みの笠松則通が切り取った映像は端正で、しみじみと美しい。また、池辺晋一郎が久々に本格的な「映画音楽」を聴かせてくれる。
槐多が85歳の老人に「50歳から85歳までは長いか?」と尋ねるシーンは秀逸。老人の答えは観てのお楽しみ。「大阪物語」で実の妻と名夫婦役を演じ、岸部一徳の盟友でもある沢田研二の感想を聞いてみたいと思うのは下世話に過ぎますね。
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静かな情熱を高平町で観ました 2006/2/9
映画館で見ました。日本の地方都市に住むごく普通の女性の日常を切り取った・・・と、みせて、実は「ごく普通」のヒトなどいないのだ。みな、それぞれ、心に秘めた情熱や想いを抱えながら、生きているのだ。ということを改めて実感させられた映画でした。私の母、近所のオバさま、クリーニング屋のおばちゃん等々、身近な女性を観る目が変わりました。さらに個人的には、この映画はウチの町内で撮影があってました。その撮影風景がまた「日常」の景色みたいでした。人だかりがあるわけでもなく、そこで撮影していることが普通のように、買い物袋さげたヒトは通るし、近くの飼い犬は容赦なく吠えるし、ウチのネコたちは見物に出かけるし。何だか、作品と作り手の両方に共通したスジの通った作品だと思います。
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美しい日本映画です! 2006/9/10
とても綺麗な日本映画です。最近まではド派手なハリウッド映画が大好きでしたが、あることがきっかけでこの映画を見ました。
田中裕子と言う人の女優魂を本当に肌で感じました。役者の方は普通の人をいかに演じきるかが難しいと良く伺いますが、まさに田中裕子がピッタリくるでしょう。岸部一特も普通のおっちゃんのように見えて実は感慨深い演技をされてますね。私は日本映画の美しさを教えてくれたこの作品をずっと大事にしていきたいと思います。美しい映画を見て日本人で良かったと思える心を誇りにしたい。
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坂道 2007/4/30
田中裕子は存在感があったなー。
ずっと離れていた間柄なのに、ちゃんと呼び捨てにも出来る。
昔ながらの話し方が出来たのは気持ちがずっと繋がっていたからだ。
不思議な恋愛だった。
こういう恋愛もあるんだな。
溺れたのが彼だと走りながらだんだん確信を持っていくところもいい。
いったいなんで溺れたんだろう。
あの笑顔は死んだ妻が呼んだからだろうか。
それとも恋が成就したからだろうか。
何十年もの恋があっけなく終わってしまった。
でも二人はずっと繋がっていた。
これで女はもう失うものがなくなって、「本でも読む」のだろう。
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幸福の基準 2007/5/19
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人生について、あるいは人間の幸福について考えさせられる作品。
平凡に見える人生にも、実はさまざまなドラマがあり、淡々と生きているように見えても、心の奥に、秘めた情熱の炎が揺らめいていたりする――。
田中裕子の演じる美奈子は、牛乳配達の仕事を生きがいと感じ、無聊を慰めるに読書をもってし、密かに想い続ける相手には病床の妻がある。
傍目には、あまり幸せそうには見えない彼女だが、本人にとっては、決して不幸な人生ではない。
また、彼女が思いを寄せる、岸部一徳の演じる高梨の人生も、最終的にそれが不幸なものであったのか、それとも自分として満足のいくものであったのかは、当人にしか分かりえないところがある。
幸福であるか、不幸であるかということは、他人からはなかなか推し量れないものだ。
自分にとっての幸福の基準とは何であるのか、改めて考えてみるきっかけとなる作品だった。
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牛乳配達の瓶の音 2007/6/10
ストーリーは少し無理がある感じがするけれども、ところどころのカメラ・ショットと
いうのかしら、それがすごくいい。印象的なのは、美奈子さんが夜明けの町、あちこちに
黄色い灯火がポツポツと光っている青い町を眺めて、「町の家々全部に牛乳が配達できたらいい」と言うところ。そして、最後、カイタさんが亡くなって、これからなにを楽しみに生きていくのと聞かれて「本を読むわ」と答えるところ。
それと、高梨カイタさんが後ろ向きになっていて、小説家のおばさまが「高梨さん」と読んでも、美奈子がおそるおそる「高梨さん」と呼んでも気がつかない、それが美奈子が「カイタっ」と名前を読んだらぎょっとして振り向く、そのところである。
田中裕子さんは、ふだんから体とか鍛えているのでしょうか、あの何段もの階段をたったったっと、牛乳のびんをがちがち鳴らしながら昇っていく。
こんな人生、いいなーと思うのです。まいにちまいにち、昭和53年からでしたっけ、瓶の牛乳を配達して、昼はスーパーでそこそこの仕事をこなし、夜は部屋いっぱいに並んだ文学全集やらの本をねそべりながら読む・・・。
そうだ、朝は味噌汁を飲みながら美奈子さんは新聞を読んでいる。一面の下の新刊書で面白そうなものがあると、はさみで切り取りながら箱に入れているのです。味噌汁の湯気・・・。
始めに言ったとおり、ストーリーがちょっとしっくりしなくって、とくに高梨の奥さんが自分がまもなく死ぬからと、美奈子にカイタと一緒になって、と頼むくだりは、わたしにはどうも現実味が感じられない。それでも、ところどころのカメラ・ショット、それが平凡ながらうつくしい。それが好きです。
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美しくてハレンチでセクシー 2007/11/24
映された背景の景色に見覚えがあると思ったら、長崎を舞台にしていた。
それでも、作者の意図により架空の地方都市という設定で、禁欲的に風景は使われている。懐かしい者にはもったいないとも思うけれど、そういう意図は正しいと言える映画だった。
田中裕子は、この映画で主演女優賞をとっているけれど、テレビで向田邦子のドラマなどでもたいへんな存在感で演じているから、特筆するほどの演技かどうかは別にしても、彼女の下記の話に現れているような、なんとも演技とは違う次元で、田中裕子という女優の魅力がたっぷりに味わえた。
「・・体力勝負で、体力だけ使っているような感じがするんですけれど、撮影が始まって2週間ぐらいが過ぎてわかってきたんですが、体力を使うことで余計な力が抜けてきた気がするんです。ハアハア言いながら階段を登るんですが、その時に運動靴がすれる音だったり、牛乳瓶が鳴る音だったり、あるいは夜が明けてくる色だったり、風だったり、そうしたものが体を抜けていって、その分、体が軽くなっていく感じがするんです。せつない物語ではあるんですけれど、そのせいで重苦しさは抜けていると思うし、私が感じた音や色や風が映像に映るといいなと思っています。・・」(田中裕子)』
大人の因縁もある秘められた恋心の、長い年月の熟成が切ないが、相手役の岸部一徳もとても好きな配役で、ふたりのクライマックスともいうべきラブシーン、というかなんというか、「いままでしたかったことぜんぶして」というような、五十代を迎えた男女の高まりの不器用さと露さが、とっても切なくて悲しくて、ハレンチで、嬉しくて、ふたりのシルエットが愛おしくて文句なしにすてきでした。
大人というのは、少年少女の頃の遂げられない思いを持ち続けたり、禁じたり、しちゃったらどうしたって哀しい。でもそいつは美しくてハレンチでとてもセクシーなんだ。
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情景が見える 2006/10/10
駅の広告でポスターを偶然見かけて、観に行くぞと思っていたのに。
見損ねてしまいました。
本が出ている事を知り、即座に購入しました。
読み終わった後、頭の中で想像すると情景が浮かんできました。
映画を見ると、また違ったイメージが頭の中に浮かんでくるかもしれません。
二人の役者のやりとりが、本の中の台詞を通して、ふわりふわりと浮かんでくるのです。
本が小説という形でなく、シナリオ形式だから、そう思うのでしょうか。
歳月をかけて甘い果実が実ったとき、人は幸せになれるのか。
それが、ほんのわずかな一瞬であったとしても。
哀しいとはいえず、けれど幸せとも言い切ることもできませんが。
これは大人の物語なのだと、自分に言い聞かせる、もう一人の自分がいました。
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題名と映画の内容が不思議 2007/4/5
分からなくも無いけど、少し 題名と内容が不思議に思えた。若い頃に経験した事って、善きにつけ悪しきにつけ きっと自分の中でいつまでも残ってて、それが個人個人で美化されたり、時には その逆だったり‥でも アッと言う間の人生!色々な意味で考えさせられて、結果として良い映画に思えました。