本年度必見の1本! 毎回映像特典:「ゆれる」メイキング,特報・予告編・TVスポット スタッフ:企画:安田匡裕、是枝裕和/プロデューサー:熊谷喜一/撮影:高瀬比呂志(J.S.C.)/照明:小野 晃/録音:白取 貢/美術:三ツ松けいこ/音楽:カリフラワーズ/編集・宮島竜治/原案・脚本・監督:西川美和
オダギリジョーが演じる弟の猛は、故郷を離れ、東京でカメラマンとして成功。一方、香川照之の兄・稔は実家のガソリンスタンドを継いでいる。母の一周忌に帰った猛だが、稔、幼なじみの智恵子と出かけた渓谷で、智恵子が吊り橋から転落死してしまう。殺人容疑をかけられた兄と、彼の無実を信じる弟の関係が、ときにスリリングに、ときに不可解に、さらに衝撃と感動を行き来し、タイトルが示すように“ゆれながら”展開する骨太なドラマだ。
都会に出た者と、田舎に残る者。性格も違う兄と弟。映画は対照的な立場を鮮やかに描きだす。西川美和監督は、微妙なセリフで男ふたりの複雑な内面を表現し、観る者のイマジネーションをかき立てまくる。背中の演技で心情を伝える香川照之もすばらしいが、兄に対する負い目と苛立ちの両方をみせるオダギリジョーは、彼のキャリアのなかで最高の演技と言っていいだろう。あのとき吊り橋で、何が起こったのか? その真実も含め、さまざまな余韻を残すラストシーンは目に焼き付いて離れない。兄弟を持つ人ならば多かれ少なかれ、ここに描かれる確執に共感してしまうはず。家族の関係も、そして人生も、一筋縄ではいかないのだと教えてくれる名編だ。(斉藤博昭)
1
若干32歳の西川監督恐るべし!! 2006/12/27
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人間の心理の複雑さを巧みに、そして、スリリングに描いていています。
本作で描きたかったのは、兄弟でも特に弟の心理。自分のことしか考えない男だから、他人との記憶が曖昧で、結果、他人もしくは自分を欺いてきた。そんな弟が、やっと素直に自分のことを振り返れるようになるまでの話なんだろうと思います。
それを描くため、ひとつの出来事の解釈が二転三転するトリッキーなサスペンスドラマ様式をとったのでしょう。これが、黒澤明監督の「羅生門」を思い起こさせ、裁判シーンの出来のよさもあって、見ごたえ十分です。
はたして実際は何が起こっていたのか? 曖昧な記憶が感情を揺さぶり、その感情が引き金となった出来事でまた揺さぶられる。観客はそんな彼らの心情を読み取るうちに、自然と揺さぶられていくという構図ですね。
オダギリ・ジョーのある種ナルシスティックな演技も自然にドラマに溶け込んでいる。終盤、兄弟二人が向き合う面会室のシーンは本当に凄いです。
それにも増して凄いのは香川照之。いい人を演じ続けてこなければいけなかった長男の苦悩、その仮面の下で抑圧されていた嫉妬、劣等感といったドロドロとした感情をさらけ出す生々しさ。
それにしても、「蛇イチゴ」もそうだったけど、本作もラストシーンまでの、すべてのシークエンスが長いプロローグのようでした。
2
ゆれている心を描いた、素晴らしい作品。 2007/5/13
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ゆれながら展開する心理描写が実にスリリングでした。田舎町の旧家でしょうか。二人兄弟の運命は決まっています。兄は跡を継ぎ、弟は都会に出る。兄は旧家のしきたりに生き、弟は奔放に育つ。家を出て都会暮らしに慣れた弟は、因習に縛られた生活を見下ろし、家に残ったものたちはその視線に気づきながらも今を生きています。そこに事件が起こります。兄弟と弟と理由ありで兄と一緒に働く女性がハイキングに行き女性が死亡します。兄が自分が殺したと証言したことで状況が一変。事件は裁判に持ち込まれます。兄は積年の鬱憤を晴らすかのように変わってゆく。一つの事件を巡って兄と弟、二人を取り囲む人達のこころがゆれます。このゆれる心理こそがこの作品の主題なのでしょう。見応えのある映画でした。兄弟役のオダギリ・ジョーさん、香川照之さんは表情の動き、目の動きで微妙な感情を演じています。素晴らしい作品です。
3
2006年度最高の邦画! 2006/12/18
人のつながりの中で一番強い絆で結ばれているはずの兄弟
でも、きっかけひとつで180度違ったものに見えてしまう。
見えていたはずのものが見えなくなってしまう。
そういった人間の心や記憶の不確かさ、不安定さ、という
のがよく表現されている映画だと思う。
こういった「人」に焦点を当てた作品を自分の脚本で作れ
る監督は古今東西探してもなかなかいないんじゃないだろうか。
個人的には間違いなく今年一番の邦画だといいたいが、万人
に受け入れられる作品ではないと思う。
しかし、この映画のテーマに興味を持った方には間違いなく
魂を揺さぶられる映画になると思うので、観て損は無いと思う。
4
鳥肌 2007/2/23
この映画を観ていて、いったい何度鳥肌が立っことか。すごすぎる。
主演のオダギリ・ジョーも、香川さんも真木さんも。そして、脇を
固める全ての俳優さんたち、みんながすごかった。検察官役のキム
兄の演技も素晴らしかった。
そして、西川美和監督による脚本の上手さ。前作の『蛇イチゴ』を
凌駕するミステリアスでサスペンスフルな空気感。そして、随所に
散りばめられた滑稽とも言える笑い、メタファーの数々が作品全体
をとてつもないほど奥行きのある世界へと仕上げています。
そして、観た人それぞれの解釈が求められる衝撃のラスト。
こんなにも鳥肌を誘発され、涙を流した映画は久しぶりでした。
西川美和監督、次回作を心から待っています。
5
K-1並みの格闘技 2007/2/10
よくありがちな題材を扱っていながら、上級のサスペンスに仕上がったと思う。
ヘタすれば「火サス」に成りかねない危険な賭けでもあったと推測する。
しかし、2年近く掛けて何度も脚本を書き直しじっくりと仕上げただけあって、セリフや画面を一瞬たりとも見逃してはならない展開へと進む。
西川監督の意思が役者やスタッフにも伝わっている感じがいい。皆が一丸となって「良いものを作りたい」と言う空気が伝わってくる。
主人公の2人もすばらしい。特に香川照之の演技は彼のキャリアの集大成と言っても過言ではない。表情の見えない背中だけのシーンや、笑顔の下の修羅の演技は脱帽モノ。
オダジョーとの面会のシーンは役の上だけでなく、オダジョーと香川の演技バトルでもある。
その画はまさに「K-1」。実際に殴りあうシーンがあるわけでもないのに【殴りあっている】様に見えるのだ。
追記として、検事役のキム兄もいい味出してました。
6
コレが悪いか 私が悪いか 2007/2/23
けっこう評価が高いようです。
私はまったく感情移入できませんでした。
とゆうか誰に移入すればいいのか
ダラダラダラと
意味ありげな挿し絵を所々に入れて、
本当につまらない。
だから結局なんなんだ。
そんな映画
7
白黒つけない方が・・ 2006/12/8
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橋のシーンの重要な部分が欠落したまま最後まで話がすすんでいくので、兄と弟のどちらが真実を語っているのかが最後までわからず、抑揚がない割には途中で退屈することはありません。最後は、オダジョーのナレーションで一応の決着がつき、白黒をはっきりさせないと気がすまない潔癖症の日本人受けしそうな結末になってはいます。
しかしながら、ラストシーンを観てもしかしたら西川監督の意向として、フランソワ・オゾンの「スイミングプール」ようなどうとでもとれるようなあいまいなラストに本当はしたかったのかもしれないと思いました。その意味では、タイトルどおりの微妙感を出すにはあまりにも香川照之の演技は過剰すぎて善悪のふれはばが大きすぎたし、いい人っぽすぎるオダジョーも邪悪さに欠けていたような気がします。但し、登場人物の精神状態を象徴するシーンなどの演出力には目をみはるものがあり、一見の価値がある映画です。
若手女流監督にとってエゴをつらぬき通すことはなかなか大変だと思いますが、ベテラン俳優へ気遣ったり周囲の雑音に臆したりすることなく、海外でも評価される大物監督に西川さんにはなってほしいと願います。
8
香川照之もオダギリジョーも秀逸だが・・・ 2007/4/15
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2006年は21年ぶりに邦画が洋画を超えたという。
確かに、なかなか劇場まで足を運ぶまでには至らなくとも、
観たいと思う映画は多かった。
本作も劇場公開には行かなかったが、気になっていたので、
DVD発売を機に手にとって見た。
結論から言えば、うーむ、という感じ。
映画はストーリーと映像と描写の3拍子だと筆者は勝手に思っているが、本作はどうか。
映像はひたすら暗くて地味で、自主制作っぽい。ストーリーもない。
で、本作が映画賞を多数受賞したのは、ひとえに心理描写にかかっている。
主演の香川照之はメイキング映像で「10年に一度出会えるかどうかの脚本」といっている。
たしかに香川の人物描写には鬼気迫る凄みがある。
香川だけでなくオダギリの演技も素晴らしい。
しかし、スッキリしない。
兄弟の愛憎確執はともかく、ひと一人死んだという設定である。
本作の主題は推理ものではないし、犯罪ものでもないが、
事の顛末ははっきりさせないといけない。
これ以上はネタばれになるので書けないが、
ラストシーンもいまひとつ、すっきりとした感動には至らなかったのは、
最後まで冤罪の疑念が残ったからであった。
役者が巧みで引き込まれる映画ではあるが、
どうにもスッキリとしない作品であった。
9
香川照之の怪演(あえてこう言わせてもらいます)が見事。 2007/5/28
最近みた邦画の中では、抜群に完成度が高い映画でした。ジャンルとしてはサスペンスですが、テーマは人間の内に秘めた愛憎と家族の絆です。
事件の記憶が明らかになればなるほど、その都度、真相が二転三転していくという、「羅生門」や「英雄HERO」のようなスタイル。主人公のオダギリジョーは、兄が幼馴染の女性を渓谷のつり橋から転落死させてしまった事件について、すこしづつ記憶を鮮明にさせていき、結果として彼の証言が兄の裁判に重大な影響を及ぼします。事故か事件か。このサスペンス部分が非常に面白い。
しかしそれ以上に見所となるのが、お互いの葛藤をぶつけ合う登場人物たちのやりとり。オダギリジョーもハマリ役ですが、兄役の香川照之は「一見ひとあたりの良い素朴な青年」が実はそうとう"腹に据えかねている"という役どころを完璧に表現してると思います。事件のシーンや、その後スタンドで何かが切れてしまう場面なんかの怪演は見もの。兄は何に対して葛藤を抱えているのか、そしてその事実に直面した弟はどういう決断を下すのか。非常に考えさせられました。
流れる川の音、そよぐ草木、事件の発端となったつり橋、そして人の心や記憶といったすべての物の不安定さを表したタイトルも秀逸だと思います。本当にいい映画を観ました。
ただ、検事役のキム兄だけは、ちょっと浮いていたかな…。
10
見事な脚本と演出、そして演技に脱帽。 2007/4/1
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人間の怖さをまざまざと見せつけてくれる作品。
特に、吊り橋のシーンに差しかかって以降は、あまりの緊迫感に、身じろぎもできずに見入ってしまったほどだった。
何が本当で、何が嘘なのか。
あの時、一体何が起きていたのか。
そして真実はどこにあるのか。
実直な兄と自由気ままな弟、という図式が、やがて、狡賢い兄と真摯な弟、という図式へと、微妙に地滑りを起こし、けれど、そのままでは終わらない。
人間の心の闇を深くえぐりながら、それでも、微かな希望をも感じさせる。
脚本と演出が、あまりにも見事。
香川照之の巧緻な演技はもちろん、個人的にはどちらかというと苦手な俳優だったオダギリジョーの繊細な演技にも、脱帽せざるを得なかった。
邦画のレベルの高さを感じさせる、観ておいて損のない映画。