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代弁することはできないが、せめて…… 2005/8/19
ハリウッドの有名監督ジョン・L・サリヴァンは貧しい人々を描く「社会派の」映画を撮るために、ボロを着て10¢の予算で旅に出ようとするが、彼の身を案ずるプロデューサーたちが一風変わった付き人たちをキャンピングカーに乗せて送ってきたため、一行の珍道中がけたたましく始まってしまう。しかしこの映画で脚本も担当したプレストン・スタージェスはこれをただの奇人たちの珍道中には終わらせず、主人公のサリヴァンを通して映画を撮る上での決意表明まで行って、スクリューボール・コメディであっても明確なメッセージを観客に送ることができると証明してしまう。貧しい人々が本当に必要としているのはサリヴァンの撮ろうとしていた「社会派の」映画ではなくディズニーのアニメに笑い転げることだった。旅の終わりにサリヴァンは「いまさらながらコメディを撮りたい」と宣言して映画は終わる。
このスタージェスの態度は戦後の小津安二郎に通ずると思う。最近小津の戦争中の日記が出版されたが、本物の戦場を見た彼は映画で戦場を描くことをしなかった。過酷な状況に生きる人が選んだ映画が、スタージェスのコメディや小津の「彼岸花」などのようにどんなに現実離れしていても、それはだれにも責められないではないか。
戦争には行かず、原水爆について「啓蒙的な」映画を数本撮った黒澤明も、あるインタヴューで言っている。「実際にあれ(原爆)受けた人達は黙ってるんだよ。向こうでずいぶん(反核)運動があるでしょ? あれはよそから行った人達がやってて……」と。代弁することはできないが、せめて彼らの心をやすめたい、というのはひとつの立派な態度だと思う。
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40年代を代表する喜劇映画作家スタージェス 2006/4/10
ルビッチ、キャプラ、ホークス、スタージェス、ワイルダー、ハリウッド喜劇映画の伝統ここにあり。
当時、米国の女性がおおいに真似たといういわくつきの髪型の持ち主、ヴェロニカ・レイクが観られるだけでも見て損はありません。魅力的!。これが彼女の出世作だと思います。監督のプレストン・スタージェスは、日本ではあまりなじみがないですけれど、1940年代では、重要な米国の監督の一人だと思います。ただ、テンポやリズムという点で先輩であるルビッチやキャプラには負けます。しかし、スタージェスならではの多彩なスタイルというのもあって、「サリヴァンの旅」は、彼の最高傑作ではないかもしれませんけれど、代表作、一番の話題作であることは間違いないでしょう。中古でお値打ちに入手できるなら必見の映画です。本作、一種のコメディではありますけれど、ゲラゲラ笑えるようなシーンはほとんどありません。いわゆる風刺劇です。当方にはファンタジにも見えます。いささか飛躍しますけれど、「The Lord of the Rings」は、「サリヴァンの旅」方式のstory だともいえましょう。仲間と何かの探求のために旅にで出る、という点において。旅路の果てに待ち構えるものは・・・。ネタバレになるのでこの辺で。