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恐怖の中でつらぬいた良心。 2007/5/2
こうして言いたいことすら言えない時代や世界があるということを知るという点でも重要で観る価値がある映画だけれど、劇作家の私生活を盗聴し監視するという主人公が、劇作家と同居している女優に対してはストーカー的な屈折感強い愛情にかられながら、劇作家の思想やピアノの調べに感化されてゆき、およそ勇気だけでは成し遂げることが出来ない良心の証明を果たしてしまうという生き方に驚かされます。
感情を抑え、結果、孤独に生きていく「国家の裏切り者に転じた命の恩人的存在」があったことを知った後の劇作家の変化、そしてそれに対しての答えの出し方に思わず声を上げてしまうエンディングにも作り手の熱さが伝わってきます。
勇気や挫折、絶望と希望が、普通ではない状況の中で複雑に交差し揺れ動き、実際あったであろうこんな生き方と真実をしっかりとした映像作品として仕上げてあります。
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HGW XX/7 2007/6/2
旧東独の国家保安省(秘密警察・シュタージ)に関するストーリーです。秘密警察の大尉として監視をする側のヴィースラー大尉と人気劇作家として当局から監視を受けるドライマン。2人の人生は,同じ建物にいながら決して交わることのないものでしたが,あることをきっかけとして…
不条理な論理で動くシュタージや,愚かしいと思いながらも翻弄される人間の弱さなどよく描かれていると思います。
特に後半の30分にとても心を動かされました。この映画の原画のタイトルは「他人の生活(人生)」,日本語のタイトルは「善き人のためのソナタ」と,異なるタイトルになっているのですが,いずれもこの映画の内容をとてもよく現わしているのだということが,最後までみてよくわかりました。特に最後の場面でのヴィースラーの台詞の含みがとてもよかったです。
追記:ヴィースラー役のミューエさんは最近お亡くなりになったと聞きました。お悔やみ申し上げます。
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監視国家の悲劇 2007/8/23
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ドイツ民主共和国・DDR(デーデーアー)は家族や友人の密告が奨励されていた、とんでもない監視国家でした。その実態はほんの最近まで我々は知ることがありませんでした。この映画は、娯楽映画の形で、DDRの実態を描いた力作です。このテーマを取り上げたというだけで映画史に特筆されるべき作品だと思います。惹句では、あのヘルツォークが「ドイツ映画史上最も重要な作品」と評したということです(ヘルツォークは現代ドイツ映画で最も重要な監督だと思います。彼が言うのだから)。
力作ですが不満はあります。まず決定的なのは、ヴィースラーが変心してゆく心理的プロセスの描写が不足していることです。これだと、単にクリスタに惚れて「ひいき」をしているようにしか見えません。ドライマンもさして魅力的には描写されていないので、感情移入できません。骨格も、「女に惚れた悪代官が男を陥れる」という、いってみれば時代劇のような話です。あと、必然性のない濡れ場がありますが、これは不要だと思います。
不満を述べましたが、全体としては骨太の力作です。最後の15分くらいは娯楽映画としても十二分に合格点の素晴らしい展開で、スリル満点であるとともに目頭が熱くなります。
以上をまとめますと、欠点はあるが、それを補って余りある作品です。視聴をお勧めします。
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生涯忘れえぬ作品 2007/8/17
見終わってから数日間、一人になるとこの映画を回想していました。
この数年来、これほどの感銘を受けた作品はありません。
旧東ドイツの監視体制の厳しさを真っ向から描き、静かな中に深い激情を秘めた傑作です。
主要キャスト3人の素晴らしさも光ります。
恐怖と監視によって人間の個人を支配せざるを得ない、共産主義体制。
この映画自体はフィクションですが、4年以上にわたる綿密なリサーチによって創作された作品であり、「事実」ではなく人間本来の「真実」を描ききった作品です。
「東ドイツの監視体制はこんなものじゃない。」という人、「こんな人間的なシュタージなどいない」という論調もあったようです。
ただ、ナチスであれ、現在のテロリストであれ、そして体制側の人間であれ、人間を善と悪の2極に分けることは決して出来ないのです。
被害者と加害者、時代が変わるとそれが逆になることもある。
どちらの立場をまっとうしようとも、悪の中にも光が、善意の中にも澱みと闇が混在する。
自由と抑圧、美と欲望、善と悪、慢性と変遷、そして音楽。
押し付けることのない静かな映画だが、見ているこちらの心は2時間、集中がとぎれることなく毛細血管の先まで震えた。
劇作家と舞台女優の美しさと脆さ、主人公のシュタージの哀切。晩年、現実をひたすら受け入れ、黙々と手紙を配達する言葉なき姿とラストシーン、涙がにじみ出てき、気づいたときにはあふれていた。
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近年、屈指の名作!! 2007/7/19
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ヴィースラーはドライマンの芝居を観てから、厳密に言うとクリスタを見た瞬間からすでに揺らぎ始めていた。そして、あからさまな描写は無いですが彼女に恋したと言っていいと思います。盗聴器から聞こえてくる劇作家と恋人、その友人達の自由な発想や、愛の営み、芸術・文学・音楽に心を揺さぶられていく。そこには羨望もあったかもしれない。
さらに、芸術に触れたからだけではなく、大臣にへつらう上司や特権を使ってクリスタをわが物にしようとする大臣を目の当たりにし、忠誠を誓った社会主義に疑問を持つようになってゆく。そのヴィースラーの心の動きを、じっくりと丹念にウルリッヒ・ミューエが見せます。
ヴィースラーがなぜそこまで心変わりしたのか、もう少し描写があれば、との評もあるようですが、ヴィースラーのじわりじわりとした心境の変化とその静けさは、ガブリエル・ヤーレ(「コールドマウンテン」「Shall we Dance?」なども担当)の音楽と共鳴し、十分読み取ることができたし、唯一、酒場でのシーンは静かではあるけど劇的なクライマックスだと思います。
彼のポーカーフェイスは最後まで変わらないのだけど、ほんのわずかな表情の違いで心境の変化を感じさせる見事な演技。このケビン・スペイシー似(?)のウルリッヒ・ミューエの演技あってのことですが、彼の感情の起伏や心境の変化を劇的に描かないことによってこそ、この作品は成功したとも言えるのではと思います。
ラストの彼のセリフは名セリフですが、その時の彼の表情も素晴らしい。
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The lives of others (原題) 2007/10/2
舞台は1984年の東ドイツ。ベルリンの壁がおちる5年前、人々は未だ巨大な力によってコントロールされた生活を余儀なくされていた。物語は、演出家とそのガールフレンドである女優の生活を監視し、反政府派であることを立証するように命じられたエージェントと監視される側の生活を中心に描かれる。次第に相手側に感情移入していくエージェントが、彼のオペレーション自体に政治家の欲の影がちらついていることを知った時にとる行動は???
尋問後、密かに収集されている椅子に張られた布地。留守中に張り巡らされる盗聴器。国家の安全を守るためという理由で行われた数々の人権を無視した行動は、全て本当に行われていた事だ。この作品は、シュタッジの悪行を映画化したかったわけではないので、グロさはまるでない。ヒューマンドラマとして楽しめるつくりになっている。反逆は「死」を意味した時代、果たしてこのようなエージェントはいたのか?美化された物語が史実を曲げる結果にはならないか?という意見もあり、見る側にある程度の理解を求める作品だといえよう。史実を知りたい者はベルリンの博物館に行けばよい(実際、とても興味深い)。本作品は、難しい事は考えずに見て感動しよう。
命を賭けて戦いを挑んだ二人の男(演出家とエージェント)が実際に出会うことはない。演出家が、自己の記録から真実を発見したように、間接的にエージェントはその感謝をしることになる。このエンディングが、とても詩的で美しい。
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静かに、心地いい 2007/10/22
静かにすすんでいく過程は徐々に引きこまれますし、
最後のホッとする終わり方は後味が良すぎると思います。
ヴィースラー大尉の、あまり目には見えないけれど、
激しく揺れる心の葛藤がよく伝わってきました。
全体的に、直接的でない描写が多いので心地いい気がします。
統一後、ドライマンがヴィースラーを見つけて、何を話すのだろうかと思ったら、
直接会うことはなく過ぎ去り、ラスト迎えるところは、間接的描写の極みです。
そのまますれ違いで終わってしまう映画も少なくないので、素敵な裏切り方でした。
他方で、女優クリスタが魅力的に描かれすぎていると思います。
序盤から中盤にかけて、クリスタが悲劇的に描かれていますが、
これは東ドイツとか社会主義体制に固有のものではない割に、印象が強すぎると思います。
そのため、哀れみからヴィースラーの心が変化し始める、とも思えてしまう。
でも、最後まで見ると物語はよくまとまっていると思います。
静かに伝わってくる作品です。
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鮮やかなクライマックス! 2007/11/11
(※結末に触れています)
緩やかで淡々とした流れのようにも感じたひと時が、クライマックスに向かって、鮮やかな感動に変わる。
心の中に溜まっていた塵や芥が一掃されたようだ。
シュタージ(秘密警察)の大尉が信念を持って生きてきた現実。
その世界が異種の思想を持つ人間たちの日常を監視する事によって、本来の人間らしい感性が劇的に変化して行く。
そして、約束された出世をも振り捨て、命掛けで相手を守り、彼の人生は灰になって終焉を迎えたかに見えた。
ところが、彼が守った大切なものに拠って、最高の贈り物を返される。
最後のヴィースラー大尉の言葉が、誇り高く嬉しいその驚きを如実に表していた。
奇しくも、私がこの映画をDVDで見たのは、11月9日。
今から18年前のこの日に、ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツ統一の日となったのだ。
今夏急死された、俳優ウルリッヒ・ミューエに感謝と尊敬の意を捧げます。
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タルイ展開と思いきや、ラストは感嘆必至 2007/8/29
ベルリンの壁がまだ存在した時代。東ドイツの監視国家体制をベースにしたこの映画、正直言って最初の1時間ほどはあまり興味を持てず、なぜこの映画がそんなに評価が高いのかと思っていた。
ところが、反体制容疑で監視の対象だったドライマンとクリスタに、監視役だった主人公のヴィースラーが共鳴し、日本語タイトルにも使われている「善き人のためのソナタ」が流れた辺りから、俄然面白くなってくる。
ドライマン宅への国の家宅捜査、クリスタの逮捕、彼女の裏切り。それは2人の愛を信じていたヴィースラーをも裏切ることに繋がるなど、クリスタはもちろん、ドライマンも知る由もなかった。終盤のあのシーンでの、ヴィースラーの腹の底からの訴えには鳥肌が立ってしまった。
しかし、そんなどうしようもなさそうな展開に光明を射すのは、ベルリンの壁崩壊後、つまり旧体制崩壊後の“その後”(しかし監視中の記録を読めることに驚いた)だ。自分たちを監視していながらも、その実守ってくれていたヴィースラーの存在を知るドライマン。偶然街角でヴィースラーを見かけた彼は、声をかけず、劇作家という自分の立場から礼をする。
決してご都合主義というわけでも、くどい演出でもないあのラストに、私は「おお~っ!」と唸った。最近観た映画の中で最高ランクの、素晴らしい余韻を残した終わり方だ。
あまり日本ではドイツ映画は知られていないが、今作といい、「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」といい、「バンディッツ」といい、クオリティの高さはすごいじゃないか。もっと他にも観てみよう。
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心が震えました 2007/9/7
舞台はベルリンの壁が崩壊する前の東ドイツ。当時の人々がいかに窮屈で自由のない生活を送っていたか、あまり語られることのない歴史の裏側が垣間見える作品。
ラストの1シーン、ここに全てが凝縮された作品ではないかと思います。久々に心が震える台詞に出会えました。
少し地味な映画ではありましたが、たまにはこういった名作に触れるのも良いものですね。
【第79回アカデミー最優秀外国語映画賞 受賞】