1
圧倒的な名曲「第九」の誕生秘話 2007/11/12
この作品の中で、ベートーヴェンがどのような人物像で描かれているのか楽しみでもあり不安でもあったのだが結果は見事に「ベートーヴェンそのもの」であったのが、まず素晴らしい。音楽に対しての情熱、不器用で気難しいと言われているが本当は愛や友情を重んじる人間性・・・エド・ハリスは見事にそんなベートーヴェンを演じきった。ダイアン・クルーガーも情熱的な演技ながら、品のよさは始終兼ね備えており、とても魅力的だ。「第九」の全ての楽章がとても印象的にこの作品の中で奏でられるが、やはり「第九」初演のシーンは圧倒される。3楽章がなぜか省かれていたのが少し不満だったのだが(笑)まあ、ベートーヴェンの散歩のシーンで使われていたのでいいかな。(本当は「田園」がいいかななんて思うのだが)「苦悩を越えての歓喜」ベートーヴェンの音楽のテーマと言われているこの言葉は「第九」全楽章を理解してこそ大きな感動となって勇気と力を与えてくれるものだと僕は思っているのだが、その偉大なる名曲がどんな過程で生まれていったかを描いたこの作品は(もちろんフィクションはあるが)、モーツァルトとサリエリを描いたあのとんでもない名作「アマデウス」と並ぶ傑作と言ってもいいだろう。
2
良い意味として薄味な 2007/11/7
「アマデウス」のように、製作者がその才能とこだわりと予算をたっぷりと注ぎ込んで、実在の音楽家を描いた映画が大好きです。
この映画も、非常に丁寧にベートーベンを描いています。エド・ハリスのベートーベンに、少なくとも私は全く違和感を感じなかったもの。ベートーベンってこんな人だと思えました。
ただ、「人間をとことん描ききっていく」というような執拗さがなく、いい意味で(多少の減点も含めて)上品な薄味の映画に仕上がったなぁ、という印象です。
前半のクライマックスとなる「第九の初演」は、文句無く素晴らしいです。劇場で観たときは、涙が止まりませんでした。対する「静かな後半」は、監督が女性であることを感じさせます。これって、女性差別的な発言になってしまうのでしょうか。
大好きだけど、何かもう一味。という感じです。DVDを買ってよかったな、と思っていますけど。
3
作品の詰めが甘い 2008/1/1
フィクションだからお話しは全て嘘であるとしても、やはり実在の人物を取り扱うのだから、あまりにも音楽や楽器の時代考証や、第九の初演の経緯や事実と異なるのは違和感が隠せない。第九の初演は80人程の演奏者であったのに、その演奏は立派な現代オーケストラでコーラスや独唱は技術的に難しいノンビブラートには驚いた。
あと、あの主人公のアンナ・ホルツは結局何をしたかったのだろうか?
猜疑心が強く、俗物で自己中心的なベートーヴェンは何処の誰かもわからないアンナ・ホルツの何を受け入れて家に招きいれ、自分の音楽の訂正まで許せたのだろうか?
アンナ・ホルツ側にはネームバリューの高いベートーヴェンと仕事ができることで、自分の音楽性を高める?ってことはあったようだが、ベートーヴェン側にしたら、単に正確な写譜ができる程度のことなら、特段のことはないように思うが。
第九の初演は、正指揮者はウムラウフで、副指揮としてベートーヴェンが立ち、演奏会は興行的には失敗に終わっており、ベートーヴェンはその出来に大変不機嫌でした。映画で観客の拍手のほうにベートーヴェンを振り向かせたのは、アルト歌手のウンガーでした。
4
こんなベートーヴェンは音楽室になかった ^^ 2007/11/22
アンナ・ホルツという女性の写譜師は架空の人物だそう。
しかし、彼女の目を通して、知られざるベートーヴェンの姿をとことん描き出している。
日頃音楽室に飾られたこわばったこわーい顔の
ベートーヴェンしか頭に浮かばないが、
偏屈ながら、無骨でしかし繊細なベートーヴェンがよく描かれていたと思います。
聞こえないことを極端に象徴するというより
耳が聞こえない作家の現実を
映像を通して実感した気がします。
しかし、聞こえない苦悩とこわさを超えて
彼女と一緒に演じきった「第九」は
本当にすばらしかった!
5
見応えある映画でした 2007/12/16
・・
良くある男女の恋愛でなく師弟愛で結ばれた
アンナとぺートーヴェンの関係にそそられた。
「君は私になりたいのだろう?」
ああ、なんか分かる分かると納得してばかり。
私にも尊敬している先生がいるから尚更だった。
お互いに相手を受け入れてゆく様も面白いし、
第九が誕生するプロセスもとても興味深かった。
初演の日、アンナと大作曲家の魂が繋がる瞬間、
そして楽曲の素晴らしさと、とても感動的だった。
心に残ったセリフ「芸術家は自分を信じるものだ」
孤独で年老いた天才と魂の部分で結びついた
アンナの心の揺れが面白い見応えある映画だった。
6
大フーガ 2007/11/24
個人的には、オープニングの大フーガが一番印象的で素晴らしい映像表現だと思いました。
私が初めて大フーガを聴いたのは弦楽合奏版でしたが、吐き気がするほどのもの凄い曲で
途中で断念した思いがあります。
ベートーヴェンが残した後半の曲はどれも深淵で高い精神性を感じますが、
第九があまりにも完成された曲なので、それを映像にするにはとても大変だと思います。
第九シーンは「不滅の恋」のほうが、良かったです。
全体的にもう少し泥臭さがほしかったです。綺麗すぎだと思いました。
しかし、オープニングがとても印象的で心に残るシーンだったので星5つです。
最後のシーンも良かったです。
7
タイトルは悪いが中身はいい 2007/12/18
第九の初演シーンが素晴らしい。このシーンだけでも、この映画は観る価値がある。
「第九誕生の陰に、女性写譜師あり」というフィクションだが、描かれているベートーヴェンはおおよそ史実にのっとっているそうだ。ベートーヴェンが使っている補聴器や集音器をそのひとつ。もっとも、第九を書いているころはもっと難聴が進んでいて、特製の補聴器(ラッパですね)も役に立たなかったという。
危篤状態のベートーヴェンのもとへ向かうヒロインが、ウィーンの自然と弦楽四重奏曲(大フーガ)の交感を経験するシーンや、ベートーヴェンの楽譜を「訂正する」出会いのシーンなど「音楽の本質」をついていて共鳴するが、第九の初演シーン以降は尻すぼみになっていく。
描かれているベートーヴェン像も、モーツァルトを思い切り下品に描いた『アマデウス』を見ていなければ驚かされたかもしれないし、新鮮に受け止めたかもしれないが、幸か不幸か我々はもうこれくらいのことでは動じない(ベートーヴェン役のエド・ハリスの熱演には大きな拍手を送りたい)。
ちなみに、ベートーヴェンが用いている鍵盤楽器類は当時のものを再現しているが、流れる音楽は現代の演奏なので、注意が必要(昨今、当時の演奏を再現している指揮者や演奏家が珍しくない)。ただ、そんなことを言いはじめると、ベートーヴェンが英語をしゃべっているのも気持ちが悪い。
でも、くどいようだが、第九の初演シーンはフィクションに飾られているとはいえ、圧巻だし、感動的だ。監督はここだけ撮りたかったのではないか、と思うほど本当に素晴らしい。
それにしても、ヒドい邦題だ(原題は『COPING BEETHOVEN』)。こんなタイトルでお客に来てもらえると思っているのだろうか。
8
創造の懊悩を 2008/2/4
エド・ハリス演ずるヴェートーベンはいささか軽妙ではあるが、同時代の敵意と偏見に晒されながら創造に懊悩する姿を良く描いていると思う。今日の世界のなかで最も共和制から遠い日本にあって、生き方はメッテルニヒ体制並みの現実を受け入れて、コンサートホールで純粋音楽と誤解してヴェートーベンに拍手喝采するという幸福なご仁に猛省を促すという点で必見の作品か。とはいえ架空のアンナにはやり違和感があり、わけても初演の共演!には興ざめした。かかる存在こそ唾棄するのがヴェートーベンであろうぞ。過激な思想家として監視下にあり、保守的な同時代人からの敵意と苦闘したアクティヴィストとしてエド・ハリスのヴェートーベンにはポロックと並んで好印象がある。